連載「水谷市長の給料」~静かなる変更~

パート1】その1

連載「水谷市長の給料」~静かなる変更~

月額19万円アップ

広報誌10月号で市民に初めて報告

網走市の水谷洋一市長の給料が昨年12月1日から、月額76万円から95万円に変更された。記者は、網走市長の給料月額が変更されたことを、市の広報誌「広報あばしり」10月号で初めて知った。調べてみると、水谷市長は網走市議会や報酬審議会などに諮ってはいない。また、網走市役所のオーナーである納税者に対しての報告は、「広報あばしり」10月号のみとなっている。”水谷市長の給料”について調べてみた。=5回連載します=     (大・記者)

※この連載記事の論点

①なぜ、水谷市長は給料を戻したのか?

②なぜ、早い段階で市民に報告しないのか?

(↑給料を76万円から95万円に戻した水谷市長)

■10月号 網走市は毎年の「広報あばしり」10月号で、網走市職員の給与などについて特集記事を掲載する。本紙もほぼ毎年、情報公開の観点から広報誌を基にした記事を掲載し、市民に伝えている。

先日配布された今年の「広報あばしり」10月号。記者は特集記事の中に市長を含む特別職(副市長と教育長)などの給料月額(平成31年4月1日現在)を記した表を見て、水谷市長の給料月額が変わったことを知った。

■市長選 網走市長の給料月額は、市の条例によって「95万円」と定められている。つまり、水谷市長は、本来の「95万円」に戻したことになる。戻したタイミングは、昨年の市長選(11月11日投開票)だ。(この選挙で水谷市長は無投票当選し、同12月1日に3期目となる網走市長に就任した)。

条例で定められる網走市長の給料月額は「95万円」。しかし、前市長と水谷市長は、苦しいまちの財政状況を考慮し、自身の給料月額を2割減額(※前市長時代は「1割減額」の期間もあった)してきた。

■論点① なぜ、水谷市長は給料月額を元に戻したのだろうか?。水谷市長に近い人を取材すると、その主な理由が浮かび上がってきた。「財政の危機的状況を脱したと判断したから」(市職員)だそうだ。

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次回は、網走市長の給料減額の歴史、減額せざるを得なかった理由について、前市長・大場脩氏のインタビューを交えて紹介する。


パート1】その2

前市長 大場氏にインタビュー

網走市の水谷洋一市長が自身の給料月額を76万円から95万円に変えていたことが、市の広報誌「広報あばしり」10月号を通じて市民に初めて明かされた。本来の網走市長の給料月額は「95万円」と定められており、これまでの減額措置は前市長時代から続いていた(1カ月だけ途切れる)。今回の記事は、前市長の大場脩氏へのインタビューを通じて、網走市長の給料が長年にわたり減額されていた理由などをお伝えする。 (大・記者)

※大場氏は1998(平成10)年12月から10(同22)年11月末までの3期12年にわたり網走市長を務めた

(↑給料の増額は「広報あばしり」10月号で市民に知らされた)

■減額の歴史 本紙の取材によると、網走市政において首長自身の提案により、市長の給料減額を初めて実現したのが、大場前市長だった。大場氏は市職員時代に職員課長や総務部長、助役などを歴任し、行政の仕組みも熟知していた。

市長給料の減額は99年(平成11)年7月から始まり、06(同18)年11月末まで「10%減額」。続いて、06年12月から10年(平成22)年11月末まで「20%減額」が続いた。

水谷市長が初当選した10年12月の1カ月分だけ「95万円」に戻ったものの、「財政状況が厳しいため」(市幹部職員)に11(同23)年1月から再び「20%減額」となり、昨年11月分の給料まで続いた。

~財政健全化のため「まずは自分の身を切る」~

■インタビュー 大場氏のインタビューは10月1日に行った。主な内容は次の通りだ。

―市長時代の大半が”減額期間”だった。なぜか?―

「市長としての私の最大の課題は『財政の健全化』でした。健全化策を進めれば、市民の皆さんに我慢してもらことがたくさん出てくるかもしれない、我慢してもらうためにはまず自分自身の身を切ることを考えなくてはいけないと思いました」

―減額割合は最初「10%」で、次は「20%」までに踏み込んだ。なぜか?―

「(財政を健全化するため)さらに厳しい行革が必要だと思った(能取漁港の特別会計問題などで)とても厳しい財政状況だと判断し、20%減額を市議会に提案しました」

―減額を判断した際、報酬審議会に諮ったのか―

「諮っていません。その理由は、報酬審議会で私を含めた3役(助役、収入役)の減額についての議論が始まれば当然、『議員報酬も減額だ』という流れになってしまうことが予想された。私はそこは避けたいと考えました」

―市は第4次行革推進計画で、計画期間中(H28~32年度)の5カ年で『26億円の収支不足』を見込んでいるが―

「実際にそうだとすれば、網走市の財政は危機的状況だと思います」

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水谷市長が給料を上げた主な理由は「財政の危機的状況は脱したと判断したから」(市職員)だ。次回は、その「危機的状況」の根拠などについて検証、考察してみる。


【パート1】その3

「変更」理由について考察

網走市の水谷洋一市長は、自身の給料月額を76万円から95万円に変更した。変更した主な理由は「財政の危機的状況は脱したと判断した」(水谷市長に近い関係者)からという。「危機的状況を脱した」という根拠について調べてみた。   (大‘・記者)

(庁舎建設に50億円ほどが必要になる)

■廃棄物処理施設 市幹部職員の一人は、”危機的状況を脱した”とする根拠の一つとして、「廃棄物処理施設完成したことではないか」とする。

市内の明治地区に建設された廃棄物処理施設は2018(平成30年)4月に本格稼働。総事業費は45億6200万円で、このうちの約31億円は借金(市債)で、15年間かけて返済する。

廃棄物処理施設の建設議論は、前市長が本格化させ、埋立てごみの処理方法、建設地の土地の選定などについて準備を進めてきた。

新たな廃棄物処理施設は完成したものの、借金は残っている。

■庁舎建設 廃棄物処理施設に続き、市役所の新庁舎建設が控える。「50年に一度」とも言われる大型事業で、水谷市長は今年に入ってから建設候補地を絞り込むなど、準備を本格化させた。

市主催の住民説明会用の資料では、道内の事例を参考にした上で新庁舎の建設費を「50億円」程度と想定している。

庁舎建設費の財源の一つに、国の交付金がある。市によると、条件が整えば総事業費の2割ほどを充てられそうだが、大半は市の一般財源と市債(借金)から捻出することになりそうだ。

■行革プラン 水谷市長の指示により策定された、第4次行政改革推進計画では、計画期間中(2016~2020年度)の収支不足を約26億円と試算している。単純計算だが、毎年5億円程度の収支不足が発生することになる。財政の健全化に力を入れた前市長の大場脩氏は本紙のインタビューで「実際だとすれば、危機的な状況だ」と指摘する。

4次行革推進計画では、26億円の収支不足対応策の一つに、「総人件費の抑制」を掲げる。17~20年度までの4年間で計2億円を抑制するプランで、年度ごとの抑制額を見てみると、17年度は4400万円、18年度4900万円、19、20年度はそれぞれ5400万円となっている。

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新庁舎の建設費は決まっていないが、廃棄物処理施設より高額になる可能性は高い。国の交付メニューの申請期間は20年度中となっており、申請が間に合わなかった場合、市民の負担はさらに増すことになる。「危機は脱した」とする根拠は薄いのではないだろうか。

次に第4次行革推進計画を軸に考察する。水谷市長が自身の給料月額を95万円に変更した、19年度の人件費抑制目標額は「5400万円」となっている。この抑制目標額には当然、市長の人件費も含まれているはずだ。もし、抑制目標額を算出する際、市長給料月額を変更前の「76万円」としていたとしたら、水谷市長自らが財政健全化に向けたプランを狂わすことになるのではないだろうか?

※補足データ=市の借金となる市債残高は2019年度末で325億円と見込む。前年同期と比べ6億円減少する。市債残高のピークは平成14度末の534億円。


パート1】その4

議会説明の義務なく 

昨年12月から、自身の給料月額を76万円から95万円に変更した、網走市の水谷洋一市長。条例で定められる月額に戻したわけだが、市議会や報酬審議会には諮らずに決断した。また、市役所のオーナである納税者に対しては、「広報あばしり」10月号のみでの報告だ。水谷市長はなぜ、市議会などに諮らず、納税者への報告が遅れたのだろうか? 北見市の事例などを基に考えてみる。      (大・記者)

(↑今年9月の市議会定例会で市政報告する水谷市長

■議論 市長の給料を「95万円」に戻す際、今回のケースは条例を改正するわけではないので、市議会に諮らなくてもいい。つまり、ルール上は市議会や市議に報告する義務はない。

ただ、管内の首長経験者は「議会定例会で首長が述べる市政報告の中で給料額の変更のついて触れることができ、市民の代表である市議に対して報告することは可能」とする。

■報酬審議会 地方自治体の特別職を含む職員や議員報酬を「上げる」「下げる」「据え置く」ことについては、基本的に報酬審議会の判断が重視される。ただ、網走市の場合、報酬審議会は常設されておらず、水谷市長の今回の判断に影響したかもしれない。

■北見市のケース オホーツクの中核都市・北見市の特別職報酬等審議会。常設ではないが、「必要とされるときに開催される」(同市職員課)。近年の開催数は、2016(平成28)年度4回、18年度3回となっている。

現職の辻直孝市長(15年9月に初当選、2期目)の給料月額は97万円で、条例で定められた金額だ。ただ、16年12月5日までは30%減額の67万9千円だった(減額の背景には財政健全化を視野に入れた元市長たちの判断がある)。つまり、辻市長は1期目就任後に、条例で定めた給料額に戻したわけだ。

~北見市”10年ぶり”の審議経て「据え置き」~

北見市のHPで公開される、17年3月14日付けの、北見市特別職報酬等審議会から辻市長への答申書。市長や副市長の給料額などについての答申書で、「審議の結果、現在の報酬等を『引き上げ』、または『引き下げ』とする積極的な要因はないものと判断し、『据え置き』として答申する」と結論付けている。

この答申書には、同審議会メンバーの意見も記されている。意見の一つを紹介する。

合併を経たものの、市長給料や議員報酬額は旧北見市時代に定められてから20年経過し、報酬等審議会も平成18年から約10年間開催されていないことを踏まえ、「審議会を定期開催し~中略~その時々の社会情勢を勘案しながら(市長給料、市議報酬額などを)決定することが適当である」

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記者はこの意見を読んだとき、網走市の課題を突き付けられているように感じた。

網走市長が自身の給料を変えたいときは、議会に諮る案件の有無は別として、可能な限り多くの人との議論を経て決定すべきではないだろうか。また、変更を決定したのであれば、市役所のオーナーである納税者にできるだけ早く、より周知効果の高い方法で伝えるべきではないだろうか?


パート1】完

市長自身からの回答

自身の給料月額を「76万円」から「95万円」に変更した、網走市の水谷洋一市長。本紙は水谷市長に質問書を送り、①「95万円」に戻した理由②なぜ、もっと早い段階で市民に周知しなかったのか―について答えてもらった。

■期間が終わったから 質問①についての回答を原文のまま紹介する。

「市長給料は、特別職給与の特例条例を制定し、期間を定めて減額を実施してきましたが、平成30年11月までとした期限が終了したことから、本来条例で規定されている支給となったものです」

「4次にわたる財政改革の取り組みを行い、これまで実施してきた一般職員の給料の減額措置(表参照)を平成28年3月に終了し、この間の取り組みが一定の成果を得たものと考えております」

~「減額措置期間が終了したから」~

■解説1 水谷市長の回答内容ポイントは次の通りだ。

A 給料を元に戻した理由は「特別職(市長、副市長、教育長)の減額措置期間が終了したから」

B 「一般職員給料の減額措置期間が終了したから」

C 「第1~4次にわたる行革が一定の成果を上げたから」

■ポイントの総括  A はシンプルな考えだ。

B については、第3次行革推進計画から実施した、市独自の減額措置期間が終わったから―というシンプルな考え。ただ、一般職員の給料は基本的に人事院勧告の考えに基づき「引き上げ」「下げ」「据え置き」されることが大きく、市長の給料を元に戻す理由としての根拠は乏しい。

ちなみに、今年4月1日現在の市職員の平均給料は29万9900円で、前年と比べ500円の増額だった。※両年とも行革推進計画による減額措置期間は終了している

C  についてもシンプルな答えだ。「一定成果」とは何を示すのか、もう少し具体的な数字などを示してほしかったところだが、これ以上の回答はなかった

■期間が終了しただけ 質問②についての回答は次の通り(原文)。

「市長給料の減額措置は、ご承知のとおり、あらかじめ期間を定めて条例制定しものであり、その期限が終了したことから、本来の条例に定める支給となったものです」

「市長を含む特別職の給料については、毎年、「広報あばしり」10月号に掲載し、市民の皆様に周知を図り、あ明らかにしているところです」

■解説2 回答を要約すると「あらかじめ決まったいた給料の減額期間が終わったということと、毎年の『広報あばしり』10月号で市民に給料月額は周知しているから、早急に市民に知らせることはない」ということが。シンプルな考えだ。

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水谷市長の回答内容は、記者の取材に応じてくれた市幹部職員らの言葉とほぼ同じだ。異なるのは「(市の財政の)危機的状況は脱した」という言葉がなかった点だ。

想定してはいたが、水谷市長自身のお考えをもう少し聞いてみたかった。「95万円に戻した理由は、現在の国内外の社会情勢、まちの経済状況、今後の財政状況、市民に背負わす負担―など様々な観点を基に、悩み、悩んだ末に決定しました」―。こんな回答に期待していたし、水谷市長とは直接、議論できなかたのが残念だ。

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パート2】その1

連載「水谷市長の給料」~静かなる変更

他市と比較   「議論の少なさ」如実に

昨年10月に本紙で連載した「水谷市長の給料~静かなる変更~」に対する読者からの意見が、いまだに本紙に寄せられている。市民の関心の高さだと受け止める。連載パート2では、本紙が疑問視するポイントを改めて整理した上で、他市の状況などを通じて、”市民が考えるための材料”を提供できればと思っている。(大・記者)

■おさらい 連載パート1では、水谷市長が一昨年12月1日から、自身の給料月額を「76万円」から条例で定める「95万円」に戻したことを報じた。月額を変更するための「理由」、そして変更する妥当性についての議論の少なさを指摘した。

水谷市長は給料を変更してからの10カ月後、市の広報誌「広報あばしり」で初めて市民に報告。ただ、広報誌では、変更(増額)した理由をまったく説明せず、金額を記した表のみを掲載した。

■他市はどうしてる? 連載パート2ではまず、他市との比較を試みる。比較するためには様々な方法があるが、今回は「実質公債費比率(2017年度決算ベース)」を軸に比べてみた。

実質公債費比率は、地方自治体の収入に対する借金の比率だ。数値が高いほど、台所事情は苦しい―となる。国は「比率25%」を早期健全化基準値としている。

網走市の比率は「16・4%」で、道内の「市」ランキングでは夕張市(73・5%)に次いで2位。つまり、網走の財政はかなり厳しいのだ。

網走に次ぐ3位は赤平市(16・1%)だった。取材してみた。

■10%減額 赤平市は昨年12月、条例(本則)で定める市長の給料月額を、従来の86万円から10%減額の77万4千円に改定した。

条例を改定してまで市長の給料減額に踏み込んだ背景には、人口減少に伴って厳しさを増す財政状況などがある。市長の給料減額を検討するため、「道内にある34市の首長給料などを参考にした上で、総合的に適正な月額を判断しました」(同市総務課)。

同市の人口は昨年9月末時点で93年ぶりに1万人台を割り込んだ(住民基本台帳人口)。

「人口規模」だけで網走市との市長給料を比較するのは筋違い―との批判を受けそうだが、今回は両市の実質公債費比率(収入に対する借金の比率)がほぼ同じ―という点に着目し、取材・比較してみた。
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赤平市を含む他市への取材で感じたことは、網走市の場合は水谷市長の給料を変更(増額)した根拠がとても乏しく、さらに議論する場所・人・時間が圧倒的に少なかったことだ。
次回は、留萌市(実質交際比率15・2%)の状況などを紹介する。


パート2】その2

留萌市、深川市との比較

網走市の水谷洋一市長が市民や議会に報告せず、自身の給料を「76万円」から条例で定める「95万円」に戻したことを機に、本紙は他市の状況との比較を試みている。今回は『実質公債費比率』(※)の数値が近い留萌市、深川市と比べてみる。(※地方自治体の収入に対する借金の比率。数値が高いほど台所事情は苦しい。記事では2017年度決算ベースの数値を利用)

■2位と4位と5位 網走市の実質公債費比率は16・4%。道内「市ランキング」においては、その比率は夕張市に次いで2位の高さだ。

留萌市は4位(15・2%)、深川市(14・6%)5位。網走市を含めた3市の人口規模は異なるが、”借金の比率”は同規模と判断し、「市長給料額」「市長給料についての議論の深さ」などを比べてみた。

■条例改正し減額に 留萌市長の現在の給料月額は83万円である。この月額は条例で定められた額だ。18年3月の選挙で初当選し、現在1期目の中西俊司 市長は自身の給料を減額せず、条例で定める給料を受けている。この点は、条例で定める「95万円」にした網走市の水谷市長と同じだが、大きく異なる点がある。

留萌市のHPで公開される「市議会だより」などによると、16年3月の定例市議会において、市長(特別職)の給料月額を従来の「90万円」から「83万円」に引き下げる条例改正案が可決された。この議会では、議員報酬などを減額するための条例改正案も可決されている。

市長の給与、議員の報酬引き下げなどについての市議会での議論は、留萌市報酬審議会からの答申を受けて行われた。本紙の取材では、網走市の水谷市長の場合は報酬審議会や市議会での議論は一切ない中で「76万円」から「95万円」に変更されていた。

■報酬審議会での議論 実質公債費比率が網走市に近い深川市。山下貴史 市長は2007(平成19)年1月に初当選し、現在4期目となる。3期目の水谷市長より、在職期間はさらに長い。

昨年1月29日、同市の特別職報酬審議会は山下市長に答申した。答申書には「慎重な議論を重ねた結果」とし、市長の給料を「据え置くことが適当である」と記されていた(答申書は同市のHPで公開)。

この答申などを踏まえ、山下市長の給料月額は条例で定められる「83万2千円」に据え置かれている。ちなみに、同市報酬審議会はこの結論を導くために会合を3回開き、議論を重ねた。
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今回は留萌市と深川市だけのケースだが、網走市はやはり議論が圧倒的に足り過ぎる。一昨年12月、水谷市長は自身の給料を75万円から95万円に戻す際、深川市のように報酬審議会を開催すべきではなかったろうか?

次回は、網走市の友好都市の状況などと比較してみる。


パート2】その3

連載「水谷市長の給料」~静かなる変更~パート2③

友好都市の状況は? 糸満、厚木市ともに減額

今回は網走市と友好都市提携を結ぶ沖縄県糸満市、神奈川県厚木市の市長給料などを比較してみる。「人口・財政規模が異なり過ぎる」との批判を受けそうだが、網走市民が「市長給料」について考えるための材料になるはずだと確信し、比較してみた。 (大・記者)

■記者も初めて知る 網走市の友好都市は2市だけ。糸満市は2001(平成13)年12月、厚木市とは05(平成17)年2月に締結した。記者は、網走市が両市と締結した当時から網走市政の取材を続けているが、首長給料については初めて調べた。取材して分かったことは、両市とも市長給料は減額しており、いずれも水谷洋一・網走市長の「95万円」を下回っている。

■財政的な理由 糸満市長の給料月額は「74万9千円」。条例では88万2千円と定められており、同市の上原昭市長は本来より15%引き下げた給料をもらっている。

市長給料の”減額の歴史”は長い。現在の減額率は02年から続き、その期間は「当面の間」としている。
減額の主な理由は「財政的な理由です」(同市秘書広報課)

■20%から30%へ 厚木市長の現在の給料月額は67万600円で、20万人都市のわりには”少ない給料”だと感じた。条例で定めれる月額は95万8千円だ。

4期目となる小林常良市長は、07年2月に就任。翌年4月から市長給料を20%減額、そして12年4月から現行の30%減額を続けている。

減額の主な理由について、同市職員課は「未曾有の経済情勢(リーマンショッ)を受け、市長自らが率先して財政対策を取っていく姿勢を示したのが(減額措置の)始まり」とする。減額率を30%に上げた理由については「東日本大震災の影響などを考慮して市長が判断しました」

同課によると、小林市長は20年度(今年4月以降)も減額を継続する方針で、4期目就任(昨年2月)を機に、年度ごとに判断し、議会に提案していく考えだという。
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今回の比較について、「財政が豊かな厚木市と比べるのはどうか」という意見が寄せられるのは覚悟している。また、市長給料の減額は選挙対策パフォーマンス―との見方をする読者も少なくないであろう。

ただ、網走市民にとって、友好都市の糸満市と厚木市の状況を「知らない」より「知っている」ほうが、メリットは必ずあると信じている。この記事が市民間の議論に役立てば幸いである。次回は、自治体の財政に詳しい人による網走市の台所事情の解説などを紹介する。


パート2】その4

「95万円」戻す余裕ある?厳しさ増す台所事情

水谷市長が自身の給料月額を76万円から95万円に戻したことについて、本紙の疑問点は①議論の少なさ②95万円にする根拠の乏しさ③厳しいまちの台所事情―だ。今回は③について、自治体財政に詳しい人の意見などを紹介する。市民間においての議論の”材料”になれば幸いである。 (大・記者)

■おさらい 水谷市長は昨年10月の本紙の取材に対し、95万円に戻した理由について次のように返答してくれた(書面回答)。
「4次にわたる財政改革の取り組みを行い、これまで実施してきた一般職員の給料の減額措置を平成28年3月に終了し、この間の取り組みが一定の成果を得たものと考えております」

■0・8ポイント悪化 公表された、2018(平成30)年度の網走市の実質公債費比率(地方自治体の収入に対する借金の比率。数値が高いほど台所事情は苦しい)は「17・2%」。前年より0・8ポイント悪化している。

「17・2%」は決して楽観視できない。簡単に言うと、網走市は人口減少などを背景に、「まちに入ってくれるお金が減っている」ということだ。

現在、市役所の新庁舎建設に向けた準備が進んでいる。市側は建設費を50億円程度と見込んでおり、新たな借金を抱える可能性は高い。

■2ポイント悪化 次は経常収支比率(地方税や普通交付税など毎年の収入に対し、人件費や扶助費など決まった支出が占める割合)を見てみる。08年度の網走市の数値は「97・4%」で、前年より2ポイント悪化している。

こうした状況について、市の財政課に勤務した経験がある複数の市職員OBに取材した。

Aさん「これほどまちの財政が悪いと思っていなかった」

Bさん「なぜ、これほど(財政が)悪化したのか知りたい」
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記者が示したデータだけでの判断だが、市職員OBが口をそろえたのは「網走市の台所状況は苦しい」だ。

Cさんの解説が分かりやすかったので引用する。

「経常収支比率が悪化すれば、市の各種事業に充てるお金が減っていくということ。様々な面で市民生活に影響が出るでしょう」
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網走市の一般会計の収入は240億7千万円で、支出は240億円(08年度決算)。赤字ではないものの、人口減少に歯止めがからず、伴って地域経済が上向く要素が少ない現状を見ると、まちの将来は決してバラ色には見えない。本紙の指摘する根拠の乏しさは、この点にある。

水谷市長や副市長ら幹部職員は、こうした財政状況を踏まえて、市長の給料月額を95万円に戻したのだろうか?


パート2】完

読者の反応は? 市民目線の市政運営に期待

連載パート2の最終回は、パート1掲載後に本紙へ寄せられた読者の声の一部を紹介する。さまざまな価値観、人生観をお持ちの市民から頂いた意見はとても貴重だ。水谷市長や市役所には届きにくい、一般市民の”声なき声”が、今後の市政運営に役立てば幸いだ。 (大・記者)

■ご理解を 水谷市長の給料が高い、低いという単純な意見は割愛させて頂き、市長の給料月額をテーマにした市民間議論に役立ちそうな声をいくつか紹介する。本来なら意見を寄せてくれた方々の実名を掲載すべきだが、網走の地域性(人口が少ないなど)を考慮し、仮名とした。ご理解願います。

本紙への意見は、電話(記者の携帯電話含む)やSNSを通じたコメントなどを通じて30件以上が寄せられている。

■市民の声 Aさん(60代男性)「条例で定められた給料に戻しただけなので問題はないのでは。私は気にしていません」

Bさん(70代男性)「市長の給料が知らぬうちに上がっていたことには驚いた。妻と二人の年金暮らしの身からすると、どうかなと思う。市議会議員は水谷市長に何も言えないのですか?」

Cさん(70代男性)「地域活動費の一部を市役所に補助してもらおうとお願いしたら『まちにはお金がない』と断れた経験が何回かある。市長の給料が知らぬ間に上がっていたことにはびっくりしました」

Dさん(年齢は未確認だが中高年層の男性)「親族にいる若者が先日、自身の給料が下がると嘆いていた。なぜ、水谷市長(と特別職)だけの給料が上がるのか理解できません」
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連載パート1、2を担当した記者は取材を通じて、水谷市長と市民(市議会含む)との議論の圧倒的な少なさを感じた。記者には先日も、読者から市長給料についての疑問が寄せられた。関心の高さだろう。

市役所のオーナーである市民、その市民の代表である市議会と水谷市長による議論する場・時間の少なさは、日々の取材で何度も感じている。2年前の「知床ナンバー問題」は顕著な例で、市民との議論の足りなさから混乱を招いた。

網走市長となりもうすぐ10年を迎える水谷市長。今後の舵取りに期待が寄せられている。

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パート3】その1

定例市議会で議員2人が質問

「報酬審議会で相談したい」

新型コロナウイルスの影響により、網走経済は危機的状況だ。客足が途絶えた飲食店などは、これまでに経験したことのない減益・減収にあえぎ、絶望感を漂わすオーナーもいる。こうした中、3月の網走市議会では、2人の市議が水谷洋一市長の給料月額について質問した。水谷市長や担当職員の答弁は「(今後は)報酬等審議会で相談したい」。”コロナ危機”の真っ只中にいる今、連載「~静かなる変更」パート3をスタートさせる。(大・記者)

■76万円→95万円に 水谷市長は一昨年12月、自身の月額給料をそれまでの76万円から95万円に変更した。「増額したのでなく、条例で定める額に戻した」との論理だ。本紙は、市議会や報酬審議会などに諮らずに、76万円から95万円に変更した点などについて、昨年から続ける連載記事を通じて問題提議している。

■代表質問 3月10日の定例市議会での代表質問(市議で構成される各会派の代表が水谷市長に質問する場)で、日本共産党議員団の村椿敏章 市議は、市の財政状況が苦しい中、なぜ市長を含む特別職の給料に関する条例を改正せずに自身の月額給料を19万円増額したのか、問いただした。

水谷市長は、市長給料を20%減額する条例期間が2018(平成30)年11月に終了したことから、「条例で規定されている額(96万円)に戻した」と答弁した。本紙記者のこれまでの取材に対する答えと同じだったが、村椿市議に対しては「条例の取り扱いについては『関係機関と網走市特別職報酬審議会について、よく相談したい』」と踏み込んだ。
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村椿市議の質問に対する水谷市長の答弁内容の最大のポイントは「報酬審議会について、よく相談したい」との部分だ。水谷市長は今後、自身の給料月額について報酬審議会にも諮る考えがある、ということを議会で表明したわけだ。

ただ、コロナ危機が深刻化する今、自身の給料月額(95万円)について、報酬審議会に諮ることを明言したわけではない。
次回は、川原田英世 市議(民主市民ネット)の質問に対する担当職員の答弁などを紹介する。


パート3】その2

川原田市議も審議会設置求め

自身の給料月額を76万円から95万円に変更した網走市の水谷洋一市長の判断、そして決断までの経緯について、川原田英世 市議(民主市民ネット)は3月の定例市議会・予算等審査特別委員会(予特)で、今後は報酬審議会を設置する考えはあるのか質問した。この質問に水谷市長は答えず、代わりに担当職員が「関係する機関とよく相談します」と述べた。(大・記者)

(↑質問する川原田市議=市のHPより=)

■市議も問題視 水谷市長の給料が76万円から95万円に変更したことについて、本紙は市議会や報酬審議会に諮らず、議論を一切しない中で結論を出したことを疑問視している。連載「~静かなる変更~」のパート1、2の掲載後、複数の市議が市議会で報酬審議会について質問をするのは、今年3月の定例会が初めてだった。一部ではあるが複数の市議も、水谷市長の今回の判断を問題視しているわけだ。

■職員が答弁 川原田市議は、3月12日の予特で「報酬審議会を今後、設置する考えはあるのか」と質問。この質問は、水谷市長自身に関わる案件である。原則論だと、水谷市長が答弁すべきだが、登壇したのは職員給与を担当する職員だった。

担当職員は川原田市議の質問に対し、「先日の村椿市議(日本共産党議員団の村椿氏は定例会の代表質問で水谷市長に給料を上げた理由を尋ねた)からの質問に(水谷市長が)答弁した通り、関係する機関と特別職報酬審議会について、よく相談したい」と答弁した。

■重い意味 市長の給料月額を20%減額し、76万円にしたのは前市長の大場脩氏である。大場氏は任期中、報酬審議会を一度も開催していない。その理由について「報酬審議会で私を含めた3役(助役、収入役)の減額についての議論が始まれば当然、『議員報酬も減額だ』という流れになってしまうことが予想された。私はそこは避けたいと考えました」と、本紙の取材に答えている。

網走市において、報酬審議会は1995(平成7)年以降、一度も開催されていない。今年3月の定例市議会で水谷市長は今後、報酬審議会を開催する考えがあることを示した。
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市議会での水谷市長の答弁は重い意味を持つ。本紙は可能な限り、チェックを続けたい。次回は「報酬審議会」の開催目的、委員構成などについて紹介する。


パート3】完

報酬審議会とは?

開催の有無 市長判断

議会や報酬審議会などでの議論をせず、水谷洋一市長が自身の給料月額を76万円から95万円に変更したことを機に、3月の定例市議会では複数の市議が関連質問をした。答弁で水谷市長は「関係機関と、報酬審議会についてよく相談をしたい」とした。ただ、条例では、同審議会の会議を招集するのは市長と定められており、水谷市長が任期中に開催するのかは不透明だ。 (大・記者)

〔↑友好都市の沖縄県糸満市、神奈川県厚木市の市長給料との比較〕

■市長が招集 市の附属機関の一つに「特別職報酬等審議会」がある。議員の報酬、そして特別職の市長、副市長,
教育長の給料の額について審査する。常設ではなく、必要に応じて開催される。

報酬審議会が属する執行機関は「市長」と定められている。構成員は7人で、審議が終了した時点で解嘱される。

会議の招集は原則、会長がする。ただ、市の報酬審議会は1995(平成7)年度以降、開催されておらず、現時点で会長は存在しないため、招集するのは水谷市長となる。

つまり、条例上では水谷市長自身が、報酬審議会の開催の有無についての権限を持っているのだ。水谷市長が会議を招集しない限り、給料月額95万円の妥当性について審査する機会はない、というわけだ。

ただ、3月の議会答弁で水谷市長は「関係機関と相談したい」としており、市議会などから報酬審議会の開催を求める声が大きくなれば、水谷市長は会議を招集するかもしれない。

■構成メンバー 前回(95年)の報酬審議会は、商工・漁業・農業・女性・労働・青年団体の代表者6人と学識経験者1人で構成された。会長は、当時の商工会議所会頭が務めた。
もし、水谷市長が報酬審議会の会議を招集すれば、構成メンバーも人選せねばならない。市の担当職員によると、「構成メンバーの人選準備には着手していない」(4月9日時点)という。
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市長の給料「95万円」が高いのか、安いのか―。それは人それぞれの価値基準によっても異なる。ただ、網走市の台所事情はかなり厳しく、しかも今はコロナ危機の真っただ中だ。収入が激減し、将来の見通しが立たないオーナーや市民は少なくない。

こうした状況の中だからこそ、市長給料「95万円」の妥当性について、役人以外の第三者により議論する必要があると考えている。

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