市民大学と政治活動


連載「市民大学とは?」① 2015年6月

現職市長が初めて講演

市民の一部「選挙活動では?」

網走市民大学で水谷洋一市長が「人口減少社会と地方創生」を演題に講演した。本紙が講演の告知記事を掲載したところ、読者から「文化事業を利用した選挙活動になるのでは」との指摘を受けた。同様の声が複数寄せられたことから、現職市長が市民大学で講師を務めたことについて、社会教育の専門家などに取材した。  (大本)

▼水谷市長の講演ポスター(エコーセンター2階)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

■配慮が足りない

本紙は5月25日付け網走面で、地方創生に向けた地域版総合戦略に関する記事を掲載。記事中、人口減少と地方創生をテーマに水谷市長が6月11日の市民大学で講演することを告知した。

この告知部分について、60代の男性から=本人の希望により匿名=「市民大学で現職の網走市長が講演するのは初めてだと思う。社会教育、生涯学習の場である市民大学で政治家(市長)が講演することに疑問を感じます」とし、「(記事を書いた)記者は配慮が足りないのではないか」と指摘を受けた。

■社会教育と政治活動

記事を書いた記者には、同様の意見が相次いだ。20代男性(1人)、30代男性(1人)、60代男女(男性1人、女性2人)、70代男性(1人)、80代男性(1人)からで、いずれも社会教育や生涯学習に関心のある人だった。

6月5日、60代の女性市民から「エコーセンターに掲示されている水谷市長の講演ポスターはまるで選挙ポスターのようで違和感がある」との声が寄せられた。指摘を受け、記者はそのポスターを見た時、『市民大学と政治活動』について取材しようと決めた。

■演題の設定

社会教育学などが専門で市民大学をテーマにしたいくつかの論文を発表している立正大学の大島英樹教授に電話取材した。大島教授は「市民大学の講師に現職の市長や区長を講師に招いた事例は全国でいつくかある」とした上で、「政治家を招く際、講演のテーマは主催者が決めることが重要です」

市民大学の趣旨に沿ったテーマ(演題)にしなければ、政治(選挙)活動になる危険性がある―と記者は解釈した。

 

 

 

連載「市民大学とは?」② 2015年6月

現職登壇、40年の歴史で初めて

実行委メンバーが提案

2回の会合で決定

社会教育事業の網走市民大学で現職市長が講演するのは初めてのことだった。なぜ、水谷洋一市長が講演することになったのか―。「発案」から「話し合い」、そして「決定」までの経緯を取材した。「市民大学を政治活動の場にするのはおかしい」といった市民からの指摘は、「決定前」にも寄せられていたようだ。  (大本)

▼市民大学で講演する水谷市長(網走市教委提供)

網、市民大学と市長02

 

 

なぜ、水谷市長は市民大学で講演したのか―。事務局の網走市教委社会教育課や市内関係者によると、同大を運営する役員会メンバーからの要望で実現した。

今年2月の同大役員会の会合。メンバーから「(同大創立から)40年という節目であり、水谷市長に講演をお願いしてはどうか」との意見が出された。

この要望に対して事務局(同課)は「行政について語るのは現課(担当部署の)職員でもいいのでないか。現職の市長が語るのは違う場にもあるのでは」との見解を示した。

現職市長の講演は、2月と5月の延べ2回の会合で決定された。決定前、事務局や一部の役員には市民から「現職市長の政治活動と誤解されるのでは」などとの声が寄せられていた。

こうした指摘が報告された5月の会合では、「市長選挙は昨年11月に終わったばかりで問題ないのでは」との意見が出た。また、市長が市内各地域に出向いて語る<まちづくり住民懇談会>との整合性について、ほかのメンバーからは「住民懇談会は敷居が高いから」との考えが示された。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

同大役員会は14人の市民からなる(事務局5人は除く)。役員になれる主な条件は「ベテラン受講生」や「役員からの推薦」である。

14人の役員会には、水谷市長の後援会役員2人が含まれる。1人は今年4月、役員会のベテランメンバーであるもう1人の後援会役員の推薦を受けて就任した。

 

 

 

連載「市民大学とは?」完 2015年6月

学習プロセスが不十分

役員会メンバー選考、「公募」提案

「市民大学と政治活動」をテーマに1カ月ほど取材を続けてきた。取材後、記事にするかは実際に水谷市長の講演を聞いてから決めようと考えていた。なぜか。「人口減少社会と地方創生」という演題とは、全く関係のない内容になるかもしれないからだ。講演を聞き、記事にすることを決めた。(大本)

 

■講演

市民大学での水谷市長の講演は6月11日に行われた。水谷市長は午後6時40分過ぎに話し始め、10分間ほどを過去に就いた仕事の内容を中心にした経歴紹介に充て、続いて、これまでに地方活性化策を展開した歴代の首相、そして現在の安倍政権に触れた。

約1時間の講演の大半は日本国全体、首都圏の人口、網走市の労働・女性人口の推移などの説明に費やした。最後の5分ほどは、あらゆる場所で自身の実績として強調している「日体大高等支援学校」と「市民健康プール」を通じた人口減少社会の対応策を披露した。

■政策

水谷市長は2期目公約に「人口減少社会への挑戦」とのテーマを盛り込んでいる。一方、「地方創生」は安倍政権の重要な政策の一つだ。人口減少は日本にとって大きな課題であるが、政策「地方創生」については様々な意見がある。

■学習プロセス

今回の市長講演の経緯を踏まえ、社会教育学などを専門とする立正大学の大島英樹教授は「市民大学を運営する上で、講師を選択し、演題を決め、そして講演当日を迎えるまでの学習プロセス(学び合い、話し合い)が大事だと改めて強調したい」

■学習

記者は読者からの指摘を受け「疑問」を抱いた。取材を通じて社会教育や生涯学習の重要性を学び、同時に危険性も感じた。

網走市民大学については、役員会メンバーを選ぶ際に公募制を導入することを提言する。

その目的は、今回のような゛違和感゛の解消、また、運営費の大半が市税であるため「透明性」と「公平性」がより求められるからである。

 

Abashiri news From denshobato